術中合併症について

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白内障手術が超音波乳化吸引術になり、「手術が短時間」「創口が小さい」「術後の炎症が少ない」「翌日から視力が出る」など良いことずくめですが、その反面として超音波乳化吸引の器具は硬い核を粉砕吸引する破壊力があるため一歩間違うと奧の水晶体の袋(後嚢)や手前の角膜内皮にダメージを与えてしまうのです。特に、後述するように手術が難しくなる問題を抱えた「ハイリスク白内障」では、そのリスクが比較的高いのです。ハイリスク白内障は経験豊富な熟練医師が執刀すること、術中合併症に対応できる経験(多くの引き出し)と技術を持った術者が執刀することが不可欠です。

いちばん起こりやすい白内障手術の術中合併症は、水晶体の袋が破れる(破嚢といいます)ことです。袋が破れると、それまで水晶体により隔てられていた、目の前方部分(=前房)と後方部分(=硝子体と網膜)がつながってしまうのです。すなわち、平穏に終わるはずだった白内障手術は、破嚢により、いきなり眼底に戦場が移るのです。詳しくはこの後をお読みください。

稀だけどハイリスク白内障に起こりやすいのが、水晶体を支えている無数の細い線維(チン小帯といいます)が切れてしまう(チン小帯断裂といいます)合併症です。超音波乳化吸引術は水晶体の袋が安定していることを前提とした手術ですので、チン小帯が弱いと超音波乳化吸引術は極めて難しい手術になります。水晶体を安定化させる特殊な方法を用いる必要があるのです。 

超音波乳化吸引の威力や砕いた水晶体核が手前の角膜内皮に及ぶと角膜内皮細胞が減ってしまいます。元々たくさん角膜内皮細胞がある方は問題ありませんが、少ない方は術後角膜が腫れて白濁したままになり(水疱性角膜症といいます)角膜移植が必要になることがあります。

後嚢破損とチン小帯断裂、ともにやっかいな術中合併症ですが、万が一起きたとき(誰にでも起こりえます)、重大な合併症が起きないように硝子体を処理して、しかも術後ちゃんと見えるようにすることが必要です。単に白内障手術に習熟しているだけではなく、目の奧の病気までカバーする経験と知識が求められるのです。

このように、白内障の超音波乳化吸引術とは、前と後ろにもろくて大切なものにはさまれながら行う繊細な手術なのです。つまり、白内障の手術を受ける場合には、このような術中合併症にしっかり対応可能な医療機関を探すことが大切です。

「破嚢」= 水晶体の袋が破れること

「硝子体脱出」= 硝子体が前に飛び出てしまうこと

「硝子体脱出」= 硝子体が前に飛び出てしまうこと

いちばん起こりやすい白内障手術の術中合併症。水晶体の袋が破れる(破嚢といいます)ことです。一番多い原因は超音波乳化吸引の時に後嚢を吸引してしまうことです。まれに前嚢切開の裂け目、皮質吸引、後嚢研磨なども原因になります。

袋や破れることがもたらす最大の問題は、それまで水晶体により隔てられていた、目の前方部分(=前房)と後方部分(=硝子体と網膜)がつながってしまい、硝子体はどんどん前に脱出してくることです。十分な硝子体の処理を行わないと硝子体が、手術創口にはまり込んで目の外へ出てきたり、硝子体が網膜を引っ張って網膜剥離や黄斑浮腫(=黄斑部がむくむこと)を引き起こします。瞳孔がいびつなかたちになります。解決策は、硝子体の前半分をしっかり切除することです。

もうひとつの問題は後嚢が破れると、袋の中に眼内レンズを固定できなくなることです。その場合、袋と虹彩の間に眼内レンズを固定します。レンズの部分(Optics)を前嚢切開にはめこんで固定を良くします。支持部(haptics)のしっかりしたレンズに種類を変えることも重要です。

平和に終わるはずの白内障手術が破嚢により一転周囲の空気が変わり手術室には緊張が走ります。手術時間は長くなってしまいますが、大切なことは脱出した硝子体が重大な合併症を引き起こさないように適切に処理し、眼内レンズを適切に固定して、術後ちゃんと視力が出るようにすることです。また、術後眼内炎やのう胞様黄斑浮腫など術後合併症が起きるリスクも高まりますので術後の管理も重要になります。

「水晶体核落下」= 水晶体の中身(核)が眼底に落下すること

「水晶体核落下」= 水晶体の中身(核)が眼底に落下すること

「水晶体核落下」とは、手術中に水晶体嚢破損が生じて水晶体の中身である核が目の奧(硝子体腔)に落ちてしまうことをいいます。

放置すると強い炎症を生じて網膜の病気を引き起こしますので、即座に取り除く必要があります。しかし、白内障手術の技術と器具では対応できなくなりますので、硝子体手術に切り替えて落下した核片を吸引除去します。そして、眼内レンズを適切に固定して術後視力がちゃんとでるようにします。

「チン小帯断裂」= 水晶体を固定している線維が断裂すること

「チン小帯断裂」= 水晶体を固定している線維が断裂すること

チン小帯とは、水晶体をまわりから支えて固定している細い無数の線維状の組織です。

チン小帯が弱いと白内障手術がたいへん難しくなります。ハイリスク白内障の代表例です。チン小帯が弱い目は、落屑症候群、外傷歴のある目、浅前房、80歳を越える高齢者の方の一部、緑内障手術歴のある目などです。

特殊な器具を使用して水晶体の袋を支えながら手術します。水晶体が超音波乳化吸引で減っていくのに合わせて高分子粘弾性物質を注入して袋をふくらませ破嚢を防ぎます。

チン小帯が切れていらり弱い症例で用いるテクニック(4本のフックで水晶体のふくろを支えて手術を行う

どんなにうまく水晶体の袋を傷つけずに手術を行ってもチン小帯が3分の1(120度)以上切れていると眼内レンズを袋の中に固定することはできません。
120度以下の断裂の場合は水晶体囊拡張リング(CTR:capsular tension ring)を用いて水晶体の袋を補強して眼内レンズを袋の中に入れることができます。しかし、120度以上断裂しているとCTRでは十分補強できず、別の方法、すなわち眼内レンズを糸で縫い付けて固定する方法(=眼内レンズ縫着術)あるいは眼内レンズを目の壁の強膜に固定する(=強膜内固定術)という特殊な方法で眼内レンズを固定します。

水晶体拡張リンク(CTR:capsular tension ring)
山根式強膜内固定術

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